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藤戸の記憶

  • 執筆者の写真: なつきち
    なつきち
  • 2020年6月14日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年5月2日


こないだ実家の玄関先で撮った空


こんにちは。

皆様いかがお過ごしでしょうか。




前回から少し間が空きましたが、リレー式ブログも第二弾です。

今回は各部員に何か一つ演目を選んで紹介してもらいます。

また週二回ほど更新していく予定ですので、ぜひご覧ください。










今回なつきちが選ぶのは『藤戸』です。


春の演目としてしばしば上演される藤戸ですが、曲そのものは決してさわやかではありません。ゆっくりと事の顛末が明かされる脚本、子を亡くした老母という重いテーマ、生々しく直截的な描写。だからこそ最短距離で胸に響くものがある。私が見たのは一度きりですが、その一度きりで忘れ得ぬ記憶となりました。私にとって最も大切な鑑賞体験と言って良いかもしれません。



瀬戸内海の夕焼け

藤戸の舞台は備前国児島。私の生まれも岡山県倉敷市です。藤戸町の見える小さな丘の上で、かつては島でした。そこには源氏本陣跡があり、藤戸のあらすじを知るよりも先に郷土の伝説としての笹無山の逸話がありました。私にとって藤戸はその緑の青さや海風の香りが、常に「現実としてそこにある」となにより実感出来る演目です。



瀬戸内海の波


勿論かつては吉備の穴海と呼ばれる海であった藤野周辺一帯も今はただの平野に変わり、当時彼らが踏みしめていた土は数メートルも下にあります。藤戸の水底に消えた男の肝魂も、今は流れてもはやありません。



それでも舞台があればその物語はよみがえり、観客の目の前で何度も男は氷のような刀に刺されて死んでしまう。藤戸という演目がある限り、男とその老母の存在が忘れ去られることはない。そのことに私は深い感慨を覚えるのです。




次は「こあたそ」にバトンタッチです。

 
 
 

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